できることなら今の状態から逃げ出したいときって誰でもあると思います。
周りから「頑張れ」と要請され、それを続けていくことを「苦」だと思うときもそのひとつでしょう。
また、このような状況で頑張れるかどうかを「向上心のあるなし」で語られることがあります。
向上心のない人は仕事はできないかもしれません。ただ向上心がない人が本当にだらしない人間なのかというとそうではありません。
たしかに仕事ができることは大切なのかもしれません。
仕事ができると周りからの評価は上がりますし、給料だってあがってハッピーなのかもしれません。
またたくさんの人は、人生の多くの時間を仕事に費やしています。
そういった意味では仕事で成果を出すことが幸せに繋がってくる可能性は高いでしょう。
ただ、一方で若い人は向上心がない「ゆとり世代」とレッテルを貼られて大人たちからは理解されないファクトがあります。
果たして向上心をもって、努力をして仕事ができ給料が上がることが本当に幸せなのかを検証していきたいと思います。
会社が社員のおしりをペンペンする言葉が向上心
会社の社員に「やる気」を出させる言葉はいつの時代もありました。
「企業戦士」だと言ってみたり、「ハングリー精神を持て」とか、「向上心がない奴はいらない」など様々な言葉で社員にやる気をださせようとします。
「アメとムチ」という人間を管理する手法はとても有名です。
「アメとムチ」という言葉に表れているように、管理される人たちにとっての利益が「アメ」で、管理する人たちがどのようにしたいのかの本音が「ムチ」というわけです。
管理する人たちは「アメ」を私たちにちらつかせてきます。
私たちの上の世代は、戦争の後の焼け野原のときは物資がなく、「本当の貧しさ」を経験したことがかつてありました。
いま言われているような「貧困率」とはレベルがまったく違います。
なぜなら、食べるものが本当にない時代はどうやって食べていくのかが最重要でした。
食うか食えないか、まさに死活問題でした。
しかし、いまの貧困層といわれる人たちは、ほとんど1日3食食べているのではないでしょうか。
たしかに、貧困層の定義上は貧困層に属するのかもしれませんが、絶対的な貧困は少なくとも日本には存在しません。
年金がもらえないという問題はたしかに問題かもしれませんが、30,40年も先のことを心配しても意味がありません。
今の上の世代の人はそういう「本物の貧困」を経験した世代から多大な影響を受けています。
子どもは親の鏡なのです。
そして、若い世代という人たちは、貧困を経験したことがないどころか生まれた頃からモノは潤沢にありました。
経済はよくなかったかもしれませんが、モノが欲しいとき手に入らないということはあまりなかった世代が若い世代なのです。
本物の貧困を経験した人たち、もしくはその子どもで本物の貧困の話を聞かされた大人たちにとって、企業がちらつかせる「アメ」は心理的にとても魅力的だったのでしょう。
「向上心」という言葉が「競争」を煽る
企業は社員のモチベーションを上げさせるやり方を日々取り入れて実践しています。
時代は変わって私たちの目の前にあらわれるものは異なっているかもしれませんが、本質は同じことです。
ちょっと昔は「企業戦士」とカッコいいイメージをつけていました。
いまでは、競争の階段をひとつでも上りつめていくことがハッピーなんだと「向上心を持て」とか言ってみたりするわけです。
向上心がない人はその、管理されることをイヤだと思っている心のどこかで「フリーダム」を愛する人たちなのもしれません。
向上心がない人たちはおそらくいい人たちだと思います。
人を思いやることができ、人を大切にすることができる人たちなのだと思います。
向上心がある人たちは競争が大好きで勝つことをよしとし、何にでも「ランキング」をつけることを慣習としています。
それが本当に正しいことなのでしょうか?
例えば、婚活といわれる「異性をランキングでどのポジションなのかを吟味して、生涯の伴侶とするイカれたことが行われている」が特徴的な世界です。
すべての基準が、「競争」によってつけられたランキングでものを見ようとするわけです。
「競争」をし続けるプロセスによって自分らしさ、つまり「自尊心」が損なわれていくことが多々あります。
なぜなら、そのままの自分がいることができないからです。
「自尊心」が低くなる弊害については、「自尊心が低い人の原因と特徴、自尊心を高める3つの方法」を参考にしてみてください。
そういう意味では向上心がない人は人間らしさを持ち合わせていると言うことがいえるでしょう。
最後に
ただ、向上心があり頑張っている人でも、どこかでつまづく人が増えてきたように思います。
無理に仕事を頑張ろうとするあまり、身体を壊してしまうことが増えてきています。それは精神的なものも含めてです。
身体はいつでも正直なのです。しっかりと自分自身の声に耳を傾けることはこれからとても大切なことになることでしょう。